音を、cd にするまで

cd やレコードになるまでの過程には、レコーディング(録音)、トラックダウン(ミックス)、マスターリングがあります。レコーディングというのは、文字通り録音することで、スタヂオ録音の場合、マルチ・トラックといって、複数のチャンネル(トラック)に別々の音を録音します。ドラムはたいてい、キック、スネア、ハットと分かれていて、声もメインやオーバーダブ(重ねる声)など別々のチャンネルに録音されます。10年くらいまえは、24トラックのアナログ・マルチ・レコーダーで録音していましたが、最近は殆どデジタル・マルチ・トラック(プロツゥールズのような)であることが多いです。我々のスタヂオもそのようなデジタル録音の環境になっています。
別々(パラレル)のトラックに録音されたものは、最後は2チャンネルのステレオにならなければなりません。録音物によって使うトラックはまちまちですが、10数トラックから20数トラックまで使われることが多いです。Audio用の Compact Disc というのは、16bit / 44.1khz / Stereo のオーディオファイルを記録させるという規定があり、最終的にはこの状態にしなくてはいけないのです。つまり、何トラック使って録音していても最後は、L と R のステレオ(つまり2チャンネル)になっていなくてはいけないわけです。ビットレートと周波数は録音するときの解像度、のようなもので、録音するときはいくつで録音してもいいけど、CD にするときには 16bit / 44.1khz になっていなくてはいけないようです(アナログレコードの場合はもっと解像度が高く出来るので、24bit / 48khz で落とすこともあります)。
トラックダウンは、簡単に言うと、マルチ・トラックをステレオ2mix にして落とす作業ですが、具体的には、各トラックの音に磨きをかけ、艶を出したり、ぼかしたり、イフェクト効果を施したり、音量調整をしながら全体のバランスを取っていく作業です。ミックスとも言います。作曲とミックスのどちらも手がけるプロデューサーと、ミックスはエンジニアに委ねるプロデューサーもいます。ミックスは、プロデューサーやエンジニアの個性が濃く出る場面でもあります。
トラックダウンされ2ミックスになった曲は、最後はマスターリングされます。マスターリングは最終仕上げみたいなもので、色々な再生環境を想定して音を調整します。イコライザーで周波数を調節したり、コンプレッサーで音圧を調整したりして、ラジカセや大きなスピーカーなど異なる再生環境でもなるべくバランスが変わらないように、仕上げていきます。そして曲間を調整して、PQコード(スタート、エンド、ポーズなどの情報。秒ではなく、フレーム数で表示)を打ち、曲ごとのコードや製品コードなども記録させます。プレス工場の担当者に提出する PQシートがないと、曲間が変わったりシークレット・トラックが消去されたりすることもあり、これを作成するのもマスタリング・エンジニアの重要な仕事です。マスタリングは、技術や経験の豊富さに加え、耳が良くないと出来ない作業なので、専門家は意外と少ないです。
そういうことを私たちは日々やっとるわけです。